M&A支援機関登録は「信頼の証」なのか

こんにちは。堀之内総合会計・労務事務所代表の堀之内です。

M&A支援者のウェブサイトを見ると、中小企業庁「M&A支援機関登録制度」という言葉を目にすることがあります。

当事務所も、2026年8月に登録支援機関となりましたので、その旨をトップページに記載しています。

中小企業庁が設けた制度であるため、「登録されている支援機関なら安心なのではないか」と考える方も多いと思います。

では、M&A支援機関に登録されていることは、その支援機関を信頼してよいという証明になるのでしょうか。

私は、一定の判断材料にはなるものの、登録の事実だけで信頼感は測れない、と考えています。


M&A支援機関登録制度とは

M&A支援機関登録制度は、事業者が安心してM&Aに取り組める環境を整備するため、中小企業庁が2021年8月に創設した制度です。

制度の目的は、中小M&Aガイドラインの理解・普及を促し、M&A支援機関に一定の規律を求めることで、中小M&A市場の環境整備を図ることにあります。

また、「事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)」では、FAや仲介業者への手数料について、原則として登録されたM&A支援機関による支援のみが補助対象となります。

単なる民間の認定制度ではなく、国の制度として、支援機関に情報開示やガイドラインの遵守などを求めている点において、登録制度には明確な役割があります。

なお、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターの中には、支援機関との連携において、この登録制度への登録を前提としているところもあります 。そのため、支援者にとっても、こうした公的な支援機関との連携を図るうえで、登録には一定の意味があります。

では、「登録=優良な支援機関」なのか

ここは少し注意が必要です。

M&A支援機関登録制度は、M&A支援者としての能力や実績を資格試験のように審査し、合格者を認定する制度ではありません。

登録にあたっては、中小M&Aガイドラインの遵守宣言、手数料体系や支援業務に関する情報の提出など、一定の要件が設けられており、また、現在は申請後に事務局による審査も行われています。

しかし、専門家としての能力を認定しているわけではなく、あくまでもM&A市場の環境整備が趣旨です。

つまり、支援機関に登録されているという事実と、この支援機関に依頼すれば、自社にとって適切なM&A支援を受けられるということは、イコールにはなりません。

登録支援機関は、決して少なくない

登録機関の数を見ても、この制度の性質が分かります。

2026年9月時点で、登録されているM&A支援機関は約3,200機関です。

制度創設当初から多くの支援機関が登録されてきたことを考えると、登録されている事実だけをもって、安心してM&Aを任せることができると考えるのは拙速かもしれません。

登録されているか、だけでなく、誰が、どのようなM&Aを、どのような立場で支援しているのかを見る必要があります。

過去のM&Aトラブルを考えても

近年、中小M&Aをめぐっては、譲渡後のトラブルや不適切な譲受け側の問題、支援機関の対応など、さまざまな問題が指摘されてきました。

中には、M&A仲介会社などの支援機関が関与した案件で、買収後に深刻な問題が生じた事例もあります。

また、中小企業庁自身も、登録されたFAや仲介業者による支援について、不適切な対応に関する情報提供を受け付けています。実際、登録支援機関について問題が確認され、登録取消しに至った事例もあります。

確かに、登録制度には、ガイドライン遵守の宣言や手数料・支援業務等の情報開示、問題があった場合の取消しなど、一定の規律を働かせる仕組みがあります。

しかし、当然ながら、登録支援機関だから問題を起こさない、というわけではないということです。

「登録されているから安心」ではなく、「登録されていることも確認する」

M&A支援業界には、現在のところ、弁護士や公認会計士などの士業のように、 M&A支援そのものについて資格制度や業法が存在するわけではありません。

だからこそ、国が設けたM&A支援機関登録制度には一定の意義があります。

登録機関であることは、支援者を選ぶ際の一つの安心材料になります。

しかし、それだけで「この支援者なら大丈夫」と判断してしまうのは少し危険です。

支援者を選ぶ際のスタートライン として考えることが良いでしょう。

登録の有無を確認したうえで、その支援機関がどのような考え方でM&Aに向き合い、どのような実績・専門性を持ち、どのような支援をしてくれるのか。

そこまで確認して、初めて自社に合ったM&A支援者を選ぶことができるのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、当事務所もM&A支援機関として登録されています。

登録を一つの判断材料として、当事務所の支援方針や専門性も含めて比較・検討していただくという姿勢で、M&A支援に取り組んでいきたいと考えています。

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